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スチルストーリー


蟹くん[制服]
ヒマだ。今日はめんどくせェ学校も休みの日、ノヴァの買いも休みの日。つまんねェ天井。
「ノ…」
「すまないが後にしてくれ、僕は今忙しい」
あまりの退屈さに声を掛けようとすれば、ゴチャゴチャした机の向こうからつまんねェ返事が返ってきた。ノヴァはさっきからケンキューだのチョーゴーだのよく分からないことをしている。
「仕方ねェなー」
寝そべっていたソファーから起き上がり家の中をうろつく。ノヴァの前を横切るたびに、余計なことをするなと言わんばかりの目を向けられるが知ったこっちゃねェ。ふと腹の軽さに気が付く。そうだ、何か食いモンを探そう。ノヴァと生活するようになってから空腹を満たす癖ができてしまった。今までは放っておけばそのうち気にならなくなっていたのに。キッチンの棚や冷蔵庫を漁るが、どれも勝手に触るなと釘を刺されたものばかりだった。
「クソ…なんもねェじゃねーか…」
一度気になってしまったからにはこの空腹をどうにかして満たさなければ気が済まない。家中歩き回って辿り着いた目の先、透明なボトルの中には綺麗な琥珀色の液体が入っている。顔に近づければツンとした匂いの中に、ノヴァと食ったハチミツケーキと同じ匂いがした。
「…これうまそーだな」
たしかこの形のボトルは、この部分をヤサシク握って捻って…前に一度破壊してからノヴァに教わった開け方を思い出しながら蓋を外す。ボトルに口をつけ、待ちわびたうまいヤツをひとくち。
「ヴ、ヴゲェエエエ!」
そして吐き出した。大変だ、ンだこれは、口から泡が止まらねェ。
「苦ェ!!!ペッペッペ!ゲホッ」
ハチミツケーキの匂いはどこへやら、ただひたすらに苦い、不快な味しかしない。洗面所の扉をブチ開け廊下に転げ出ると、ノヴァが冷ややかな目でこちらを見下ろしていた。あー怒られる、これは絶対怒られる。口から泡やら涎やらを垂らし、今日はやっぱりヒマなんかじゃなかったと軽く絶望するオレの手から、ハンドソープとラベリングされたボトルがこぼれ落ちた。
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